帳簿を作成・保存する義務のある事業者
の方について、売上げに関する帳簿を保存していなかったこと
や帳簿の売上についての記載が不十分であったこと
が税務調査において把握された場合には、帳簿に記載すべき事項に関する申告漏れ等に対して通常課される加算税(過少申告加算税・無申告加算税)の割合が最大10%加重
される措置が講じられました。この改正は、令和6年1月1日以後の法定申告期限等が到来する申告所得税・法人税・消費税について適用されます。申告所得税の場合は、令和5年分の確定申告に対する修正申告等から対象になります。
1 加算税とは?
加算税とは、申告が適正にされなかった場合や源泉徴収義務を怠った場合に課せられるペナルティであり、国税通則法で規定されている「附帯税」の一つです。附帯税には、加算税の他にも「延滞税」「利子税」があります。
加算税には過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税の4種類があり、税務調査等で申告の誤りや申告義務が指摘されたりして「修正申告」や「期限後申告」を行なった場合に本税に加えて支払わなければなりません。
①過少申告加算税とは?
確定申告は期限内済ませたが、後日の税務調査などで申告額が過少であることが指摘され、修正申告や更正があり、追加本税が発生した場合に追加本税額の10%が課税されます。この金額が期限内申告税額と50万円のどちらか多い金額を超える部分については、5%加重されて課税されます。
なお、税務署から過少申告の事実を知らされる前に自主的に修正申告した場合には、過少申告加算税は課税されません。
②無申告加算税とは?
確定申告書を申告期限までに提出せず、加えて納付すべき税金があった場合には、納付すべき税金のうち50万円までは15%、50万円を超える部分については20%が課税されます。過少申告加算税とは異なり、税務署から指摘される前に、自主的に期限後申告した場合であっても5%が課税されます。
なお、申告期限から1ヶ月以内に自主的に申告すること及び納めるべき税額の全てが法定納期限までに完納しており、過去5年間で無申告加算税または重加算税を課税されたことがなく、かつ期限内申告をする意思があったと認められた場合には、無申告加算税は課税されません。
③不納付加算税とは?
源泉徴収した所得税を納付期限までに支払わなかった場合に、納付すべき税金の10%が課税されますが、税務署から指摘される前に、自主的に納付した場合には5%に軽減されます。
④重加算税とは?
上記の①から③の各加算税が課税される場合で、仮装や事実の隠蔽により申告した、または申告を怠った場合に
・過少申告加算税の代わりに、追加で納付すべき本税の35%が課税されます。
・無申告加算税の代わりに、追加で納付すべき本税の40%が課税されます。
・不納付加算税の代わりに、追加で納付すべき本税の35%が課税されます。
2 税務調査にかかる改正
加算税の加重措置に関しては、平成28年度の税制改正においても以下のような税務調査時における改正が行われ、納税者にとっては厳しい処分が行われるようになってきています。
①調査通知後、調査開始前や調査開始後出会っても税務署から具体的な指摘を受ける前に修正申告書や期限後申告書を提出した場合の過少申告加算税及び無申告加算税の割合が改正前に比べて5%(場合によっては10%)引き上げられました。
②短期間に繰り返して無申告または仮装・隠蔽が行われた場合には、無申告加算税及び重加算税の割合が改正前に比べて10%引き上げられました。
※詳細は「加算税制度(国税通則法)改正のあらまし」をご覧くださいhttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/kasan.pdf
※「調査通知」とは、①実地の調査を行う旨、②調査の対象となる税目、③調査の対象となる期間の3項目の通知をいいます。
3 まとめ
私は、税務署に勤務していた時に数多くの所得税の税務調査を行ってきました。その経験の中で、税理士が関与していない個人事業主の中には、「確定申告の間際に、請求書や領収書から売上額や経費額をメモ程度にまとめるだけで帳簿を作成していない。そして、申告が終わるとそのメモを捨ててしまっている。」などという事例をたくさん目の当たりにしてきました。
もし、今、この記事をご覧になれている個人事業主の方で、帳簿を作成していないという方がおられましたら、題名にもあります通り令和5年分の所得税の確定申告から加算税の割合が引き上げられます。今からでも帳簿を作成して、できる限り不必要な税金を払わなく済むように注意しましょう。